5月14日(火)に岡崎市で開催された読書会に参加しました。
私の出身地なので,個人的にも注視している会です。
当日は,柴田録治先生(愛知教育大学名誉教授)と高須亮平先生(愛知教育大学教授)のお話を伺いました。
柴田先生からは主に「Agency」の重要さをOECDの文献解釈を通じてご説明いただきました。
「Agency」は「主体性かなぁ」と個人的には考えておりましたが「日本語で表せない概念である」とご説明いただいたことで自分自身の勉強不足を痛感しました。
数学教育学研究の文脈でも「Agency」概念は注目されていますが日本ではまだまだ普及していないような気がしています。「Agency」に着目した研究を見てみると「authority」や「democracy」といった概念(概念といってもそれが意味する普遍的対象が存在するのかという指摘はありそうです)が登場してきます。
数学教育という領域固有性と人間教育という領域普遍性のバランスが重要ということでしょうか。
高須先生からは,「数学的な見方・考え方」について具体的な教材を通してご講演いただきました。
「見えるものから見えないものを探る」という行為に潜む数学的な見方・考え方の提案は,明日からの授業改善にも活かせそうでしたので,現場の先生方は学びが多かっただろうと推察します。
個人的には「見えないものが見えるものを際立たせる」もありそうだと感じています。
数学的モデリングは顕著な気がしますが,条件制御によってある側面を際立たせるという見方・考え方も重要そうですね。もちろん,制御した条件を完全に無視してしまうと数学的モデルに生じるノイズの理由づけができなくなったり,偏った思考に陥ってしまうリスクがありますから,現場の先生はこの点に留意して授業を作り上げる必要があるでしょう。
なお,個人的に残念な出来事もありました。
この会に限らず研修会の参加率や参加層を注視しているのですが,今回若手参加者が少ないことの原因の一端を垣間見ることができました。
「過度な”伝統の強調”」と「”若手”の軽視」です。
前者は「この伝統的な会を絶やさぬよう次は〇〇人集めよう!」というベテランの発言に見ることができます。
「会の存続」や「参加者の人数を増やすこと」自体が目的化されているパターンです。
私のような若手では「歴史がある!」と言われてもどんな歩みを進めてきたのかがわかりません。それにも関わらず,「伝統を重視しよう」と声高に叫ばれても説得力に欠けている気がします。「なぜ会は長年続いてきており,どんな効果があったのか?」を明示化せねば若手層の心は動かせないかもしれません。その過程でもし「時代に合っていない」と判断されるのであれば会自体の刷新も個人的にはありだと感じています。もちろん,教育界でこうした「会」を仕切るのはいわゆる「ベテラン層」ですから,若手の意見は届かないことが現状です。
もっといえば,私のような発言を現場教員がしてしまうと「生意気な!」で生きづらくなっていきます。それくらい教育界は狭いコミュニティということなのかもしれません。
後者は私自身の体験から導かれます。
今回受け付けで「名前に丸をつけて下さい」と言われたので探したのですがなかなか見つかりませんでした。「しまった!名前をお伝えし忘れていたのかな?」と思っていると「あれ?名前ない?大学生?」とお声がけいただきました。若く見ていただいたのは嬉しいことですが,「大学生相手になるとタメ口になって見下したように振る舞う」というのはなぜなのでしょうか。
その背景にあるのが「過度な年功序列の存在」だと感じます。
相手が自分より下の身分だと分かった段階でタメ口に切り替わるという振る舞いが存在している時点で「若手は参加しづらいだろうな」と感じています。「本来対等な議論が実施されるべき会において,若手が下に見られている」ということですから。
確かに,授業力や指導力という意味ではまだまだ未熟な若手ですが,それでも勉強会に参加して自分を高めようとしている大学生や若手教員に対しリスペクトがないのはいただけませんでした。
思えば,私が大学生の際に参加した日数教の夏期研究大会においても同じようなことがありました。
素朴な疑問や数学に対する議論を行いたくて話しかけたのに「大学生には言ってもわからないけど〜」と何食わぬ顔で語る先生が意外とたくさんいるのです。TPOに応じたマナーは必要ですが,どんな場でも敬意は重要だと思っていたので残念です。
実際問題として,「なぜ勉強会に参加していないのですか??」と若手に伺ってみると「忙しいから」はもちろんのこと「居場所がない(居づらいから)」と言われることも多いです。
「確かにそうかもなぁ」と感じることのできる貴重な経験をさせていただきました。
残念ながら,今の私の実力では会の運営に参加できないので,しばらくはこの会への参加を辞め,自分の周りの小さなコミュニティから少しずつ変えていけるように尽力しようと考えています。
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